宮崎市定『大唐帝国』(中公文庫)

大唐帝国―中国の中世 (中公文庫)

大唐帝国―中国の中世 (中公文庫)

本書は大唐帝国について執筆された一般向けの本であるが、実際はその記述の大半が魏晋南北朝の記述に費やされ、またその一部は同著者の『九品官人法』の記述と類似しているため、読んだことがあれば似たような言及があることに気がつくはずである。研究書、というよりはその時代に関する概説書的位置づけのため、むしろ初心者にちょうど良いのではなかろうか。似たような本を挙げるとすれば、岡崎文夫『魏晋南北朝通史』であろうか。現在市販されているのも私が、所有しているのも「内編」しかないが。

また著者の経験というか、戦中期の日本の行動に関する記述が所々見受けられ、その辺は時代を感じてしまう。その辺も学術書ではない気軽さだろうか。

後漢末以後、激動の魏晋南北朝時代を経て、大唐帝国が崩壊するまでの流れを俯瞰したい人にはおすすめである。