桓寬『鹽鐵論』本議第一 (1)

前漢の昭帝期の専売制に関する議論を纏めた『鹽鐵論』を題材とします。現在進めている『白虎通』と並行して取り上げていこうと思います。基本的には今の『白虎通』と同じ感じで進めていきます。

惟始元六年,有詔書使丞相、御史與所舉賢良、文學語。問民間所疾苦。
文學對曰:「竊聞治人之道,防淫佚之原,廣道德之端,抑末利而開仁義,毋示以利,然後教化可興,而風俗可移也。今郡國有鹽、鐵、酒榷,均輸,與民爭利。散敦厚之樸,成貪鄙之化。是以百姓就本者寡,趨末者衆。夫文繁則質衰,末盛則質虧。末修則民淫,本修則民愨。民愨則財用足,民侈則饑寒生。願罷鹽、鐵、酒榷、均輸,所以進本退末,廣利農業,便也。」

昭帝期の始元六年(紀元前61年)、丞相(田千秋*1)及び御史大夫(桑弘羊)は賢良、文学の士と共に専売制に関する議論を行うことになる。

まず、文学の士が問題を提起する。塩、鉄、酒に関する専売と均輸制が施行されている影響で、民衆が奢侈に走って本業たる農業に精を出さない。その為に風俗は衰え国の収入も減っている。それ故、今の均輸制を廃止して農業に精を出させるような方策を採るべき、とある。

この専売や均輸を実施したのは御史大夫である桑弘羊その人。武帝の遠征事業で掛かる費用を賄うために施行した方策だが、この方策が却って悪影響を与えているのだ、とする批判である。

*1:車千秋とも称する。