薬を飲む時の注意点

『禮記』曲禮下第二には、薬を飲む際の原則が記されている。

 君有疾飲藥,臣先嘗之;親有疾飲藥,子先嘗之。
 醫不三世,不服其藥。

主君が薬を服用する際にはその臣下が問題ないかどうか確認し*1、親が薬を飲む際には子供が確認するという。そして医者が三代に渡って続かない限り、その医者が処方する薬を服用してはならない、という決まり事もあったという。

前者は忠孝に関する話であるが、後者は実務的な意味があるのだろう。祖父親子三代にわたって研究された薬でなければ、信用がおけないということなのだろう。もしこの記述が本当なのであれば、後漢時代に活躍した華佗は色々な人物に薬を処方しまくっているから、医者として三代以上続いているのだろうか。『後漢書』方術列伝の伝える所によれば、

華佗字元化,沛國譙人也,一名旉。遊學徐土,兼通數經。曉養性之術,年且百歲而猶有壯容,時人以為仙。沛相陳珪舉孝廉,太尉黃琬辟,皆不就。

とあって、徐州の地に遊学して勉強したことくらいしかわからないし、三代続いたかどうかは定かではないけれども、「養性の術を暁り、年且に百歳にならんとするに而して猶壮容有り」と称されるあたり既に仙人の如き記述である。それとも華佗一人で三代にわたって医術を相承したに等しいと見なされたのか。

もっとも『禮記』の教えている所は、薬を服用するにはちゃんと実績があって効果が検証されたものでなければ、万が一があるといけないから君子に飲ませてはいけないということなのだろう。

*1:注釈には「嘗とは、其の堪える所を度る」とある。