班固『白虎通』巻九 姓名 (1)

人所以有姓者何?所以崇恩愛,厚親親,遠禽獣,別婚姻也。故紀世別類,使生相愛,死相哀,同姓不得相娶者,皆為重人倫也。姓者,生也。人稟天氣所以生者也。《詩》云:「天生蒸民。」《尚書》曰:「平章百姓。」姓所以有百者何?以為古者聖人吹律定姓,以紀其族。人含五常而生,正聲有五,宮、商、角、徴、羽,轉而相雜,五五二十五,轉生四時異氣,殊音悉備,故姓有百也。

姓が何で存在するのか、ということに対する見解。曰く「恩愛を崇め、親を親しくするを厚くし、禽獣から遠ざけ、婚姻を別にする所以なり」ということ。そして生を相愛しみ、死を相哀しみ、同姓を娶ることが無いように「世を紀して類を別つ」ことで人倫を重んじるようにすると。ちなみに「紀=記」。

詩経に曰く「天は蒸民を生む」といい、尚書では「百姓を平章す」という。蒸民は多くの民、平章は公平に治めるの意味(『漢字源』調べ)。姓は古の聖人が定めたのだが、何で百姓なのかというと、【五常×五声×四時】で掛け合わせると合計百。だから百姓。

五常は普通であれば仁・義・礼・智・信の徳目を指すと思うのだが、陳立『白虎通疏証』の注釈で『潛夫論』卜列篇の下記部分が引用されていることから、どちらかと言えば五行を指すと考える。

古有陰陽,然後有五行,五行各據行氣以生,世遠乃有姓名。是故凡姓之有音也,必隨其本生祖所土也。太蔯木精,承歲而王,夫其子孫鹹當為角。神農火精,承熒惑而王,夫其子孫鹹當為徴。黄帝土精,承鎮而王,夫其子孫鹹當為宮。少蔯金精,承太白而王,夫其子孫鹹當為商。顓頊水精,承辰而王,夫其子孫鹹當為羽。雖號百變,音行不易。
(『潛夫論』卜列篇)

五声は本文に書いてある通り各音階を示し、四時は春夏秋冬。記憶が確かなら五行って五声とか四時を各々対応させていたから、それぞれ掛け合わせるのは不自然な気もするんだけど、まぁそういうことらしい。

とにかくここで重要なのは、姓を作った理由は同姓不婚の原則を徹底させることが第一義にあるということ。これが禽獣と人倫を区別するポイント。陳立の注釈には色々書いてあるけど、ここら辺を押さえておけば良いのかなと思う。