班固『白虎通』巻九 姓名 (4)

人所以有字何?所以冠徳明功,敬成人也。故《礼士冠経》曰:「賓北面,字之曰伯某甫。」又曰:「冠而字之,敬其名也。」所以五十乃称伯仲者,五十知天命、思慮定也。能順四時長幼之序,故以伯仲号之。《礼檀弓》曰:「幼名冠字,五十乃称伯仲。」《論語》曰:「五十而知天命。」称号所以有四何?法四時用事先後,長幼兄弟之象也。故以時長幼号曰伯仲叔季也。伯者,長也。伯者,子最長迫近父也。仲者,中也。叔者,少也。季者,幼也。適長称伯,伯禽是也。庶長称孟,魯大夫孟氏是也。男女異長,各自有伯仲,法陰陽各自有終始也。《春秋伝》曰:「伯姫者何?内女也。」婦人十五称伯仲何?婦人質少変,陰道促蚤成,十五通乎織紝紡績之事,思慮定,故許嫁,笄而字。故《礼経》曰:「女子十五許嫁,笄。礼之称字。」婦人姓以配字何?明不娶同姓也。故《春秋》曰:「伯姫帰于宋。」姫者,姓也。質家所以積于仲何?質者親親,故積于仲。文家尊尊,故積于叔。即如是,《論語》曰:「周有八士,伯達、伯适,仲突,仲忽,叔夜,叔夏,季随,季騧。」不積于叔何?蓋以両両倶生故也。不積于伯、季,明其無二也。文王十子,《詩伝》曰:「伯邑考,武王発,周公旦,管叔鮮,蔡叔度,曹叔振鐸,成叔処,霍叔武,康叔封,南季載。」所以或上其叔、季何也?管、蔡、霍、曹、霍、成、康、南皆採也,故置叔、季上。伯邑考何以独無乎?蓋以為大夫者不是採地也。

姓名に関する記述の最後。字に関する話題。字を有する所以は「徳を冠し功を明らかにし、成人を敬う所以なり」ということで、言い換えれば相手に対する敬意である。周代の頃は50歳を過ぎると20歳の頃の字を捨て、敬意を以て「伯仲」を字とする習慣があったらしい。「所以五十乃称伯仲者...」の件はその習慣に由来する。

字のルールに関してはネット上で広く論じられているので今更繰り返す必要もないと思うが、とりあえず述べておく。兄弟の長幼によって字に関する文字が変わる。年長から順に伯、仲、叔、季。嫡子は「伯」の字を用いるが、庶長子の場合は「孟」の字を字に用いる。

女性は15歳で一人前となって嫁に嫁いでも問題なくなる為、成人(笄)する。男性と異なり家門を表す氏ではなく姓を用いた「字+姓」の構成になるのは、同姓不婚の原則を貫く為。

最後の箇所は解釈にイマイチ自信が無いのだが、『詩伝』で引用する管叔鮮以下は基本的に「姓+叔or季++名」の構成になっいて、どうやら是が周代のルールだったらしい。一方、「伯邑考」に叔や季の字を置いていないのは、「伯邑考は大夫の階層だから、そんなルールには縛られない!」ということらしい。ここから読み取れるのは、周代における姓名の呼称は漢代以降と必ずしも同一では無さそうだ、ということである。もちろん、昔ながらの名残が続いていることもあるだろうが、そうでないことも意識ながら読まないといけない。

姓名に関しては他に『禮記』を筆頭に参考となる書籍が色々あるので、これらを参照しながら当時の実情を勘案しつつ調べていかないといけない。『白虎通』一冊だけで簡単に判断できるものではないのだ(という言い訳で〆)。